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第32話 名刺

2017/03/23 Thu 07:10
category - エッセイ
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◆3月の初旬に娘が勤めている会社で組織変更があったそうだ。この時期になると娘が勤める会社に限らず多くの企業などで組織変更が行われる。部門が新設されたり廃止されたり、更には合併したり名称変更されたり……。その内容はそれぞれの企業で様々だ。
 僕も今までに色々な組織変更に遭遇した。チーム、係、課、部、プロジェクト等々、経験した単位もバラエティだ。そういえば会社単位での組織変更も経験した。かつて勤めていた会社が、あるグループを形成する子会社の一つで、そのグループの改編に伴い、親会社の某部門とグループ傘下の子会社による統廃合が行われたのだ。その際は幸いにもリストラではなくて、単なるグループ内の組織改編だったのだけれど、世の中には事実上リストラというような組織変更も現実的に行われている。そういう意味では3月というのは厳しい時期になったりもするから複雑な気持ちになることが多い。

 じゃあこの度の娘のケースはどうだったのか?
 今回の娘のケースも単なる組織変更のようだ。娘の話によると、これまで東京にしかなかった企業アライアンスに関する営業部署が関西にも新設されたらしい。そしてその部門の創設メンバーの一人に、何と娘が選ばれたそうだ。
 それって出世か? と訊いたところ、そういうわけではないようだ。待遇はヒラのままだし、それまで所属していた部門の仕事も引き続き担当するそうで、言ってみれば兼任する仕事が増えただけということらしい。
 じゃあ給料は上がるのか? と訊いたところ、それも不明らしい。そもそも固定給の割合と同じくらい個人成績による割合が占めている給与制度だからヒラのままなら給与はさほど変わらんそうだ。
 そんなのしんどいだけとちゃうんか? と更に訊いたところ、自分がやりたかったことだから、そうは思わないと言う。何でも以前たまたまたその部門の責任者と話をする機会があって、その際に自分がやりたいことを話したことがあったらしく、それがきっかけで今回の兼任の話が持ち上がったのだとか……。

 それならいい。やりたくもないことを押し付けられてしんどい目に遭うのはキツイ話だが、自分がやりたいことができるのであれば、それは正にチャンスだ。色々なことにチャレンジすればいい。それはきっと成長の糧になるだろうし将来の自分を形成する良い材料にはなるはずだ。仮に失敗したってまだまだ若いのだから、やり直しなんて何度でも効くさ。

 それにしても娘もいっぱしの社会人になったのだと、つくづく思う。昨年、社会人になったものの、入った会社が事前に聞いていたのと話が違うことだらけで、3ヶ月ほどで辞めてしまった時は親として心配したのだけれど、すぐに今の会社に転職し、日々の仕事をそつなくこなすようになった今は、その姿に安堵している。そして更に飛躍しようとしているその様は、人生の先が見えて更には社会のお荷物となりつつあることを実感しているこの五〇代の能なしオヤジにとっては、我が子ながら眩暈がするほどキラキラと眩しく光輝いて映る。いやはやマジでもう本当に羨ましい。

 そんな娘が「はい、これ」と言って私に紙切れを渡した。何かと思って見てみると、それは娘の名刺だった。
 最初に入った会社では名刺はもらえなかったそうだ。そして今勤めている会社でも、これまでが内勤の仕事がメインだったから名刺はもらえていなかったらしい。しかしこの度異動した部署では外回りも担当することになるとのことで名刺を作ってもらえたそうだ。
 会社名、部署名、娘の名前、そしてメアド。更には会社の住所にスローガン、コーポレートマークにPマーク。今どきの会社だからか見た目もオシャレだ。
 僕は今までにいくつかの会社に勤め、それぞれで名刺を作ってもらったが、こんなにオシャレなものはなかった。裏面を見ると全国にある支社名と住所が記載されているが、更には会社が提供している各種サービスの称号やマークなども記載されていて、これまたオシャレだ。
 そうだ、そうなのだ。娘からもらった名刺を見て僕は、娘が勤めている会社が大企業とまではいかないにしろ、全国展開しているそこそこ大きな会社なのだと改めて認識した。そしてその時、自分が何だかすごくちっぽけな人間に思えて仕方がなかった。

 会社の規模で人間の価値が決まるわけではない。小さな会社で働いていても、個人で働いていても、はたまた本当に安い給料で働いているにしても、それが人間の根本的な価値を表すものではない。それは重々わかっているのだ。しかし現実は厳しい。世間はやっぱり会社の規模や年収で人間の価値を見出そうとしがちだからだ。そして自分もそうなのだろう。だからか現実的に娘のオシャレな名刺を見たりしてしまうと、自分のちっぽけさだけがやたらと目につくし自分の可能性の無さを嫌でも意識せざるを得ない。

 単純で卑しい人間だなあって自分でも思うのだけれど、僕はもう少しの間、いやこの先ずっと、自分が死んでしまうまでは、娘に対しては社会的にも経済的にも人間的にも威張って説教を垂れることができる人間でいたかった。「何を生意気なこと言ってるんだ、このアマちゃんが!」と娘を見下すくらい、自分はずっとずっと上の方にいつつ、実のところは娘をこっそり庇護している、そんな存在でい続けたかった。
 だが近年、日々はっきりしてくるのは自分の無能さと体たらくぶりばかりで、更にここに及んでは娘の名刺に追い打ちをかけられる有様。こんな人間では近いうちに間違いなく娘から見下げられることになるような気がしてならない。

 叶わぬことではあるが若かりし頃に戻りたい。それができないのであれば、どうか死ぬまでに一度でいいから大輪の花を咲かせたい。そして、これでもかと思えるほどのオシャレな名刺なんぞを作って日本中、いや世界中にバラ撒きたい。それもダメだと言うのなら、いっそのこと、この身も心も消して欲しい。絶望的に生き続けるだなんて、まっぴらごめんだ。




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