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第65話 摩耶学生センター(2)

2017/05/11 Thu 07:22
category - エッセイ
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 もうお察しかと思うが、あの酸っぱいニオイはゲロのニオイだ。僕たちのように先輩やOBから浴びるほどの酒を胃に流し込まれるも、やがてそれを逆流させて食ったものや胃液と共に口から逆噴射して床にまき散らして、そこらにある雑巾で拭いては畳に滲み込ませるということが数多くの人間たちによって行われてきた結果のニオイだったのだ。
 まさに歴史的な臭い、伝統的な臭いだ。

 それにしてもあれだけの酒を飲まされながらも誰一人として急性アルコール中毒にならなかったのが今でも不思議だ。生まれながらにして酒に強いと思われた奴も確かにいたが、新入生のたいていは僕みたいに酒にさほど慣れていなかった人間だった。それまでにほとんど酒を飲んだことがなかったという奴もいた。それでも皆、注がれた酒を、それぞれが限界に達するまで飲み干した。きっと普通の飲み屋だったらあんなに飲めなかっただろう。そういう意味では摩耶学生センターで夜を徹して行われたあの種のコンパは日常を極端に逸脱した世界だったのかも知れない。
 もしあの場で急性アルコール中毒になっていたら……。
 今更ながらに考えただけで恐ろしい。もしそうなってしまったら、あんな山奥に救急車がすぐに来ることなんてあり得ないだろうから、下手すると死んでいたんじゃないだろうか。それを考えると僕たちは運が良かっただけなのかも知れない。

 新入生たちがゲロを吐きまくって床に横たえた頃、宴は落ち着きを取り戻す。
 僕は気持ちが悪くて朦朧としながら辺りを見ていた。僕を含めた新入生たちは皆ご多分に漏れず酔いつぶれて床に横たわっていたのだけれど、先輩やOBたちは皆したたかに酔っていた。酔った勢いでOBに食ってかかっていた先輩がいたり、ひたすら歌って踊っている人達がいたり……。山の中で自分たちしかいないから、どれだけ騒いでも気にする必要がない。男も女も現役もOBも、眠くなったらそこらで勝手に薄っぺらい布団を敷いて雑魚寝だ。こういう状態で男と女が雑魚寝なんてしたら変なことになることもあったんじゃないかと思われそうだが、その辺りは皆大人だった。やはり基本的には学術系のきちんとしたサークルだったから、その辺はわきまえていたのだ。

 翌朝は二日酔いで目が覚めた。もちろん先輩もOBたちも同じだ。
 朝食にパンと牛乳を摂り、その後簡単な掃除をして建物を後にする。そして三宮に戻り、「エリーゼ」という喫茶店に入って各々好きなものを飲んで一時間ほどダベる、というのがいつものパターンだった。

 懐かしい。こんなことを思い出したのはいつ以来か。

 そうやって僕は年に数回はサークルの何かしらのコンパで「摩耶学生センター」(つまり「旧摩耶観光ホテル」)を利用した。
 最後に僕が利用したのは僕たちの代が卒業する際に行われた追出しコンパだったから、かれこれ30年以上前だ。できればOBとしても参加して新入生たちに浴びるほどの酒を飲ましてやりたかったのだけれど、僕が卒業して数年後に残念ながらそのサークルは解散してしまった。時代が時代だけに活動内容が若者には受け入れられなくなり新入生がまったく入ってこなくなってしまったのだ。
 そして「摩耶学生センター」も、あの阪神大震災が起こる何年か前に管理人の体調不良により閉鎖されてしまった。更には震災によって倒壊は免れたものの大きな損傷を負い、立ち入り禁止になった。建物の脇を通っていた登山道も通行禁止になって訪れる者は皆無になり、あの建物は廃墟になった。

 しかし今ここが人気スポットになっているというから驚きだ。前出の新聞記事によると建物自体は今では廃墟マニアに絶大な人気があるらしい。何でも付近の廃墟を「マヤ遺跡」と名付けて歩いて巡るツアーが好評らしく毎回すぐに定員が埋まる盛況ぶりだとか。
 まさかあの建物がそんなふうになるだなんて、あの頃の僕は想像だにしなかった。世の中、何がどう変わるかなんてわかったものじゃない。
 でもそんなに人気があるのなら僕も一度参加してみたいものだ。参加して、あの建物に近づいたら今でも酸っぱいニオイがするのか是非とも確かめてみたいと思う。






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